【コラム】1,900Kmの旅

私は今年、15年ほど活動していた日本での生活を引き上げて、15年前に手放さないといけなかったモノを探し求めるためにアメリカに活動拠点を移すことにし、今その途中段階にいます。

大学院の時に住んでいたオレゴン州のポートランドが最終目的地ですが、その前に南カリフォルニアにある町に数か月滞在していました。充電期間を終えてポートランドに向かうために17年前にも辿った同じルートを今回も運転することになりました。20代の時はできるだけ早く着けるように旅路を急いだのですが、40代となった今は、旅路を急ぐことよりも、長年会っていない友人と途中会いながら、いろいろなことを振り返る旅を選びました。

1900㎞という距離を日本にいる時は運転することはなかったので、久しぶりの長距離運転をしながら、これまでのこと、これからのこと、いろんなことを考えました。壮大な距離を移動するので、風景も移動するに連れて大きく変わります。炎天下の砂漠地帯に何千頭という牛が見渡す限り飼育されていたり前方の玉ねぎの輸送トラックには屋根がないから皮がずっと高速道路を舞い続けていたり、地平線まで続く規模の畑があったり、走れども走れども家一つない草原があったり、次第に緑が増えて羊が農牧していたり、のどかな風景にワイン用のブドウ畑が広がっていたり、雪に覆われた標高4,321mのシャスタ山が聳え立っていたり。そのスケールの大きさを身体で実感する距離でした。

日本に引っ越した時には、西欧で受けたアートセラピーやカウンセリングの教育をどのように日本の文化の中に適用するべきかと悩んだり、工夫しながら自分なりの答えやスタイルを見つけたけれど、アメリカのスケールの大きさを通しても感じたアメリカ国内での文化の違いに加えて、東洋から西洋に今度は戻って来たからには、いったいどんな柔軟性や適応力が求められるだろうかと、不安と好奇心が今は入り混じっています。

今回は中規模の町に住んでいる友人や田舎の山奥に住んでいる友人にも会ったのですが、都会に住むアメリカ人と田舎に住むアメリカ人の生活も文化も、国境を超えるのと同じくらい違うということを目の当たりにして、テレビで見る思想、宗教、異文化への抵抗などによる衝突が生まれることが実は不思議な現象ではないというのを実感する機会でもありました。

そう思った時に、こんなにも幅広い文化の違いの中でいったいどうやってクライアントを支えるアートセラピスト/カウンセラーとして活動して行けばいいのだろうかと圧倒されましたが、自分にできることは「人を大切にすること。相手が今居る場所から一緒に歩くこと。」であって、それを守り続けることでこれまでも未知の世界に踏み込んだ時にハートが通じて結果的にクライアントが良い方向に進むサポートが可能になったので、今から進もうとしているまた新たな未知の世界でも同じく人を大切にしながら進んで行こうと思います。

 

アートセラピスト 辻ロビン